微小構造体の検査装置および微小構造体の検査方法
技術分野
[0001] 本発明は、微小構造体たとえば MEMS (Micro Electro Mechanical Systems)を検 查する検査装置および検査方法に関する。
背景技術
[0002] 近年、特に半導体微細加工技術等を用いて、機械'電子 '光'化学等の多様な機 能を集積ィ匕したデバイスである MEMSが注目されている。これまでに実用化された MEMS技術としては、たとえば自動車'医療用の各種センサとしてマイクロセンサで ある加速度センサや圧力センサ、エアフローセンサ等に MEMSデバイスが搭載され てきている。
[0003] また、インクジェットプリンタヘッドにこの MEMS技術を採用することにより、インクを 噴出するノズル数の増加と正確なインクの噴出とが可能となり、画質の向上と印刷ス ピードの高速ィ匕とを図ることが可能となっている。さらには反射型のプロジェクタにお V、て用いられて 、るマイクロミラーアレイ等も一般的な MEMSデバイスとして知られ ている。また、今後 MEMS技術を利用したさまざまなセンサゃァクチユエータが開発 されることにより光通信'モパイル機器への応用、計算機への周辺機器への応用、さ らにはノィォ分析や携帯用電源への応用へと展開することが期待されている。技術 調査レポート第 3号 (経済産業省産業技術環境局技術調査室 製造産業局産業機 械課 発行 平成 15年 3月 28日)には、 MEMSに関する技術の現状と課題という議 題で種々の MEMS技術が紹介されて!、る。
[0004] 一方で、 MEMSデバイスの発展に伴い、それを適切に検査する方式も重要となつ てくる。たとえば、加速度センサ等の微小な可動部を有する構造体は、微小な動きに 対してもその応答特性が変化するデバイスである。したがって、その特性を評価する ためには精度の高い検査をする必要がある。
[0005] 例えば、そのデバイスの特性を評価するために予めテスト用パッドを設けて、所定 のテストパターンに従うテスト用パッド力もの出力特性を検出し、解析すること〖こよって
デバイスの特性を評価する方式が挙げられる。あるいは、レーザ変位計等を用いて、 微小構造体の微小な可動部の変位量を検知することによって、その特性を評価する ことち考免られる。
[0006] しかしながら、テスト用パッドとして、通常デバイスに予め設けられているパッドのうち 使用されて 、な 、空きパッドを用いることが想定される力 レイアウト等の制約により ノッドの個数には制限があるなかで空きパッドを利用することは、近年のデバイスの 多機能化に伴 、ますます難しくなつてきて!、る。
[0007] また、テスト用の特別なパッドを新たに設けることも考えられるが、チップ面積が大き くなり製造コストが掛カるという問題もある。
[0008] また、レーザ変位計等は、レーザ光の照射に応答した測定値によりデバイスの特性 を評価するものである力 レーザ光が照射できない部分に対しては、適用することは できな 、と!/、う問題がある。
[0009] さらには、デバイスの内部破壊ゃ目視検査が困難な外部破壊等を非破壊検査する ということは非常に困難であり、それを実行する場合においては非常に高価なテスタ を用いなければならな ヽと 、う問題がある。
発明の開示
[0010] 本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、簡易な方式 で微小な可動部を有する構造体を精度よく検査する微小構造体の検査装置および 微小構造体の検査方法を提供することを目的とする。
[0011] 本発明に係る微小構造体の検査装置は、可動部を有する微小構造体の特性を評 価するものであって、微小構造体の可動部に動きを与える電気的駆動手段と、駆動 手段に基づく微小構造体の可動部の動きにより出力される音を検出し、その検出結 果に基づいて微小構造体の特性を評価する特性評価手段とを備える。
[0012] 微小構造体は、例えば、基板上にアレイ状に複数個配置されている。
[0013] 上記の特性評価手段は、好ましくは、微小構造体の可動部の動きに応答して出力 される音を検出するための測定手段と、測定手段により検出された音の信号特性と 所定のしき!/、値となる音の信号特性との比較に基づ!/、て微小構造体の特性を評価 する判定手段とを含む。
[0014] 一つの実施形態では、測定手段は、音の周波数特性を検出するものであり、判定 手段は、測定手段により検出された音の周波数特性と、所定のしきい値となる音の周 波数特性とを比較して微小構造体の特性を評価する。
[0015] 他の実施形態では、測定手段は、音の振幅を検出するものであり、判定手段は、測 定手段により検出された音の振幅と、所定のしきい値となる音の振幅とを比較して微 小構造体の特性を評価する。
[0016] さらに他の実施形態では、測定手段は、音の位相特性を検出するものであり、判定 手段は、測定手段により検出された音の位相特性と、所定のしきい値となる音の位相 特性とを比較して微小構造体の特性を評価する。
[0017] 微小構造体は、例えば、スィッチ、加速度センサ、角速度センサ、圧力センサおよ びマイクロホン力もなる群力も選ばれた少なくとも一つの素子である。加速度センサは
、例えば、多軸加速度センサであり、角速度センサは、例えば、多軸角速度センサで ある。
[0018] 本発明に係る微小構造体の検査方法は、微小構造体の可動部に電気的手段によ つて動きを与えるステップと、微小構造体の可動部の動きにより出力される音を検出 するステップと、音の検出結果に基づ!、て微小構造体の特性を評価するステップとを 備える。
[0019] 上記の特性評価ステップは、好ましくは、検出した音の信号特性と、所定のしきい 値となる音の信号特性とを比較することを含む。
[0020] 一つの実施形態では、音検出ステップは、音の周波数特性を検出することを含み、 特性評価ステップは、検出した音の周波数特性と、所定のしきい値となる音の周波数 特性とを比較することを含む。
[0021] 他の実施形態では、音検出ステップは、音の振幅を検出することを含み、特性評価 ステップは、検出した音の振幅と、所定のしきい値となる音の振幅とを比較することを 含む。
[0022] さらに他の実施形態では、音検出ステップは、音の位相特性を検出することを含み 、特性評価ステップは、検出した音の位相特性と、所定のしきい値となる音の位相特 性とを比較することを含む。
[0023] 本発明に係る微小構造体の検査装置および微小構造体の検査方法は、微小構造 体の可動部の動きにより出力される音を検出し、検出結果に基づ 、て微小構造体の 特性を評価する。したがって、検出用の特別なテストパッド等を設ける必要はなぐ簡 易にテストを実行することができる。また、非破壊でデバイスの内部破壊ゃ目視検査 が困難な外部破壊等を検査することができる。
図面の簡単な説明
[0024] [図 1]本発明の実施の形態に従う微小構造体の検査システム 1の概略構成図である。
[図 2A]カンチレバー型の MEMSスィッチが静止している状態を概略的に説明する概 念図である。
[図 2B]カンチレバー型の MEMSスィッチが動作している状態を概略的に説明する概 念図である。
[図 3]本発明の実施の形態に従う微小構造体の検査方法について説明するフローチ ヤート図である。
[図 4]電子ビーム照射器の照射窓にメンブレン構造が用いられている場合を説明する 図である。
[図 5]本発明の実施の形態に従う微小構造体の検査システム 1 #の一部を説明する 概念図である。
[図 6]測定治具 45およびその上に載せられた電子ビーム照射器の照射窓 80を詳細 に説明する図である。
[図 7]測定治具 45およびその上に載せられた電子ビーム照射器の照射窓 80を詳細 に説明する別の図である。
[図 8]3軸加速度センサのデバイスを上面力も見た図である。
[図 9]3軸加速度センサの概略図である。
[図 10]各軸方向の加速度を受けた場合の重錘体とビームの変形を説明する概念図 である。
[図 11A]X(Y)軸におけるホイートストンブリッジの回路構成図である。
[図 11B]Z軸におけるホイートストンブリッジの回路構成図である。
[図 12A]3軸加速度センサの傾斜角に対する出力応答を説明する図であり、 X軸周り
に回転させたときのデータを示して!/、る。
[図 12B]3軸加速度センサの傾斜角に対する出力応答を説明する図であり、 Y軸周り に回転させたときのデータを示して!/、る。
[図 12C]3軸加速度センサの傾斜角に対する出力応答を説明する図であり、 Z軸周り に回転させたときのデータを示して!/、る。
[図 13]重力加速度 (入力)とセンサ出力との関係を説明する図である。
[図 14A] 3軸加速度センサの周波数特性を説明する図であり、 X軸のセンサ出力の周 波数特性を示している。
[図 14B] 3軸加速度センサの周波数特性を説明する図であり、 Y軸のセンサ出力の周 波数特性を示している。
[図 14C] 3軸加速度センサの周波数特性を説明する図であり、 Z軸のセンサ出力の周 波数特性を示している。
[図 15]測定治具について、 3軸加速度センサのデバイス下側に設けられた図である。
[図 16A]3軸加速度センサのテストにおいて、デバイス側面から見た概略図であり、測 定治具に設けられた電極を示して ヽる。
[図 16B]3軸加速度センサのテストにおいて、デバイス側面から見た概略図であり、測 定治具に載せられた 3軸加速度センサのチップを示している。
[図 16C]3軸加速度センサのテストにおいて、デバイス側面から見た概略図であり、電 圧印加状態における 3軸加速度センサの動きを示している。
[図 17]他の測定治具について、 3軸加速度センサのデバイス下側に設けられた図で ある。
発明を実施するための最良の形態
[0025] 以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、 図中同一または相当部分には同一符号を付し、その説明は繰返さない。
[0026] 図 1は、本発明の実施の形態に従う微小構造体の検査システム 1の概略構成図で ある。
[0027] 図 1を参照して、本発明の実施の形態に従う検査システム 1は、テスタ (検査装置) 5 と、微小な可動部を有する微小構造体のチップ TPが複数形成された基板 10とを備
える。
[0028] テスタ 5は、検出チップ TPから出力される音を検出するマイク 3と、外部とテスタ内 部との間で入出力データの授受を実行するための入出力インタフェース 15と、テスタ 5全体を制御するとともに測定部 25により検出された音を解析する制御部 20と、マイ ク 3により検出された音を測定する測定部 25と、チップ TPの可動部に対して動きを与 えるための電気信号である電圧を出力する電圧駆動部 30とを備える。なお、マイク 3 はテスト対象物近傍に配置されているものとする。また、図 1においては、図示しない チップ TPのパッドに電圧駆動部 30からプローブ針 Pを介して所定の電圧が印加され ているものとする。なお、本例においては、電気的作用によりチップ TPの可動部を動 かす場合について説明するがこれに限られず別の手段たとえば磁気的作用等により チップ TPの可動部を動かすことも可能である。
[0029] 本例においては、一例としてカンチレバー型の MEMSスィッチ(以下、単にスイツ チとも称する)を用いてテストする場合にっ 、て説明する。
[0030] 図 2Aは、カンチレバー型の MEMSスィッチが静止している状態を概略的に説明 する概念図である。スィッチは、基板 50と、カンチレバー 51と、制御電極 52と、カン チレバー接合部 53と、接合電極 54とで構成される。
[0031] 図 2Bは、スィッチが動作する場合を説明する図である。制御信号が制御電極 52に 与えられるとカンチレバー 51が制御電極 52側に引付けられる。これによりカンチレバ 一接合部 53が接合電極 54と接触する。これによりスィッチがオン状態となる。一例と してパルス状の「H」レベルあるいは「L」レベルの制御信号が制御電極 52に与えられ るとすると、カンチレバー接合部 53は上下に動作して接合電極 54と接合状態 Z非接 合状態を繰返す。なお、制御信号が「L」レベルの状態において図 2Aの状態で、制 御信号が「H」レベルの状態において図 2Bの状態となる。
[0032] 図 3のフローチャート図を用いて、本発明の実施の形態に従う微小構造体の検査 方法について説明する。図 3を参照して、まず微小構造体の検査 (テスト)を開始 (ス タート)する (ステップ SO)。次に検査チップ TPに対してテスト信号を入力する (ステツ プ Sl)。具体的には図 1で示されるように所定のパッド PDにプローブ針 Pが接触され 、電圧駆動部 30により、テスト信号である所定のノ ルス状の出力電圧が制御電極 52
に印加される。なお、テスト信号は、外部から入力される入出力データに基づいて入 出力インタフェース 15を介して制御部 20に入力され、制御部 20が所定のテスト信号 となる出力電圧を出力するように電圧駆動部 30を指示するものとする。
[0033] そして、テスト信号により、検出チップ TPの可動部が動作する (ステップ S2)。具体 的には、図 2で説明したように、制御電極 52にテスト信号を印加することにより、スイツ チが動作して、カンチレバー接合部 53と接合電極 54とが接合状態となる。この接合 状態の際に発生する接触音 (打撃音)をマイク 3で検出する。すなわち検出チップの 可動部であるカンチレバー接合部 53の音を検出する (ステップ S3)。
[0034] 次に、制御部 20は、マイク 3により検出された検出音に基づく検出チップの特性値 を評価する (ステップ S4)。
[0035] 次に、制御部 20は、測定された特性値すなわち測定データが許容範囲であるかど うかを判定する (ステップ S6)。
[0036] 具体的には、測定部 25により検出された検出音の信号特性と予め定められている しきい値となる信号特性とを比較して、比較結果に基づいて評価する。そして、比較 結果により許容範囲力否かを判定する。検出音の信号特性の比較方式としては種々 の方式が考えられるが、一例として理想的なチップ力も検出された理想的な検出音 を基準音として比較することができる。基準音の音圧、スペクトラムや周波数特性、あ るいは振幅および位相特性等を基準すなわちしきい値として、それとの比較により検 出チップの検出音を評価することができる。たとえば、検出チップ力 検出された検 出音が基準音の周波数特性と比較して全く異なる周波数特性を示せば検出チップ は不良であると判定することができる。あるいは、検出音の振幅と、基準音の振幅とを 比較することにより検出チップの特性を評価することができる。さらに、検出音の位相 と、基準音の位相とを比較することにより検出チップの特性を評価することができる。 また、これらを全て組み合わせて比較し、検出チップの特性を評価することも可能で ある。
[0037] ステップ S6にお 、て、許容範囲であると判定された場合には合格であるとし (ステツ プ S7)、データの出力および保存を実行する (ステップ S8)。なお、データの保存に ついては図示しないが、制御部 20からの指示に基づいてテスタ 5内部に設けられた
メモリ等の記憶部に記憶されるものとする。また、制御部 20は、測定部 25からの測定 データに基づき検出チップを判定する判定部としての役割も果たしている。
[0038] ステップ S9において、次に検査するチップがない場合には微小構造体の検査 (テ スト)を終了する(ステップ S 10)。一方、ステップ S9において、さらに次の検査すべき チップがある場合には、最初のステップ S1に戻り再び上述した検査を実行する。
[0039] ここで、ステップ S6にお 、て、制御部 20は測定された特性値すなわち測定データ が許容範囲ではな 、と判定した場合には不合格 (ステップ S11)であるとし、再検査 する (ステップ S12)。具体的には再検査により、許容範囲外であると判定されるチッ プについては除去することができる。あるいは、許容範囲外であると判定されるチップ であっても複数のグループに分けることができる。すなわち厳しいテスト条件にクリア できないチップであっても、保守'補正等を行なうことにより実際上出荷しても問題も ないチップも多数存在することが考えられる。したがって、再検査等によるそのグルー プ分けを実行することによりチップを選別し、選別結果に基づいて出荷することも可 能である。
[0040] 本発明の微小構造体の検査方法により、可動部から発生する音を検出して、微小 構造体の特性を評価することができるため検出用の特別なテストパッド等を設ける必 要はなぐ簡易にテストを実行することができる。さらに、可動部の動きにより発生する 音を検出して、音の信号特性によりデバイスを評価する方法であるため、デバイスの 内部破壊ゃ目視検査が困難な外部破壊等を検査することができる。したがって、レ 一ザが照射されな ヽ部分や、デバイスを破壊しなければ検査することができな 、部分 についても検査することができ簡易かつ低コストな検査を実行することができる。
[0041] 次に、検出チップとしてメンブレン構造の微小構造体を検査する場合について説明 する。
[0042] 図 4は、電子ビーム照射器の照射窓にメンブレン構造が用いられている場合を説明 する図である。図 4に示されているように、真空管 81から大気中に対して電子ビーム EBが出射される照射窓 80の一部が示されており、その拡大した断面構造に示され るように薄膜のメンブレン構造が採用されている。なお、図 4では単一材料にメンブレ ンが形成され、かつ 1つのメンブレン構造のみが図示されている力 複数の材料で多
層膜構造として形成される場合や、あるいは複数のメンブレン構造がアレイ状に配置 された照射窓とすることも可能である。このような可動部を有する機械部品であっても 、本発明の実施の形態に従う検査方法によって、膜の破損やクラックの有無や膜質 の検査等を実行することが可能である。
[0043] 図 5は、本発明の実施の形態に従う微小構造体の検査システム 1 #の一部を説明 する概念図である。具体的には、本発明の実施の形態に従う検査システム 1 #は、テ スタ 5と、測定治具 45を含む。テスタ 5については、図 1で説明したのと同様であるの でその詳細な説明は繰返さない。また、電圧駆動部 30は、プローブ針 Pを介して測 定治具 45のパッド PD #と電気的に結合されている。
[0044] 図 5においては 1つのパッド PD#とプローブ針 Pとが電気的に結合されている場合 がー例として示されている。そして、この測定治具 45の表面に、電極 EDと照射窓 80 とが直接接触しな 、ようにスぺーサ 47が設けられて 、る。
[0045] 図 6は、測定治具 45およびその上に載せられた電子ビーム照射器の照射窓 80を 詳細に説明する図である。図 6を参照して、測定治具 45の表面に電極 EDが設けら れている。そして電極 EDと照射窓 80との間において所定間隔 Lを確保するためのス ぺーサ 47が設けられている。また、電極 PDと外部パッド PD#とは上述したように電 気的に結合されている。
[0046] 検査方法については、図 3で説明したのと同様の方式に従って実行される。すなわ ち、電圧駆動部 30からプローブ針 Pを介して電圧を印加することにより、メンブレンと 電極 EDとの間の静電引力に基づいてメンブレンが測定治具 45に吸引され、この吸 引動作を周期的に実行することによりメンブレン構造を有するデバイス力も出力され た検出音をマイク 3で検出する。そして、測定部 25において検出された検出音を測 定し、制御部 20においてその判定を実行する。
[0047] 図 7は、測定治具 45およびその上に載せられた電子ビーム照射器の照射窓 80を 詳細に説明する別の図である。図 7を参照して、図 6に示される照射窓 80と比較して 異なる点は、図 6に示されるメンブレン構造の照射窓 80は下向きとして配置されてい るのに対し、図 7に示されるメンブレン構造の照射窓 80は上向きとして配置されてい る。また電極 EDの上にスぺーサ 48と、サブ電極 EDaを設け、スぺーサ 48を貫通す
るコンタクトホールにより電極 EDとサブ電極 EDaとが電気的に結合されている。そし て、図 6で説明したように電極すなわちサブ電極 EDaとメンブレン構造との距離が と なるように設定されている。この場合においても図 6における場合と同様の方式に従 つて微小構造体の検査を実行することができる。
[0048] 次に、別の微小構造体である 3軸加速度センサについて説明する。
[0049] 図 8は、 3軸加速度センサのデバイスを上面から見た図である。図 8に示されるよう に、基板に形成されるチップには、複数のパッド PDがその周辺に配置されている。そ して電気信号をパッド PDに対して伝達あるいはパッドから伝達するために金属配線 が設けられている。そして中央部には、クローバー型を形成する 4つの重錘体 ARが 配置されている。
[0050] 図 9は、 3軸加速度センサの概略図である。図 9を参照して、この 3軸加速度センサ はピエゾ抵抗型であり、検出素子であるピエゾ抵抗素子が拡散抵抗として設けられて いる。このピエゾ抵抗型の加速度センサは、安価な ICプロセスを利用することができ るとともに、検出素子である抵抗素子を小さく形成しても感度低下がないため、小型 ィ匕 '低コスト化に有利である。
[0051] 具体的な構成としては中央の重錘体 ARは 4本のビーム BMで支持した構造となつ ている。ビーム BMは、 X, Yの 2軸方向で互いに直交するように形成されており、 1軸 当りに 4つのピエゾ抵抗素子を備えて 、る。 Z軸方向検出用の 4つのピエゾ抵抗素子 は、 X軸方向検出用ピエゾ抵抗素子の横に配置されている。重錘体 ARの上面形状 はクローバー型を形成し、中央部でビーム BMと連結されている。このクローバー型 構造を採用することにより重錘体 ARを大きくすると同時にビーム長も長くすることが できるため、小型であっても高感度な加速度センサを実現することが可能である。
[0052] このピエゾ抵抗型の 3軸加速度センサの動作原理は、重錘体の加速度 (慣性力)を 受けると、ビーム BMが変形し、その表面に形成されたピエゾ抵抗素子の抵抗値の変 化により加速度を検出するメカニズムである。そしてこのセンサ出力は 3軸それぞれ 独立に組込まれた後述するホイートストンブリッジの出力から取出す構成に設定され ている。
[0053] 図 10は、各軸方向の加速度を受けた場合の重錘体とビームの変形を説明する概
念図である。図 10に示されるように、ピエゾ抵抗素子は、加えられた歪みによってそ の抵抗値が変化する性質 (ピエゾ抵抗効果)を持っており、引張り歪みの場合は抵抗 値が増加し、圧縮歪みの場合は抵抗値が減少する。本例においては、 X軸方向検出 用ピエゾ抵抗素子 Rxl〜RX4、 Y軸方向検出用ピエゾ抵抗素子 Ry 1〜Ry4および Z 軸方向検出用ピエゾ素子 Rzl〜Rz4がー例として示されている。
[0054] 図 11Aは、 X(Y)軸におけるホイートストンブリッジの回路構成図である。 X軸および Υ軸の出力電圧としてはそれぞれ Vxoutおよび Vyoutとする。
[0055] 図 11Bは、 Z軸におけるホイートストンブリッジの回路構成図である。 Z軸の出力電 圧としては Vzoutとする。
[0056] 上述したようにカ卩えられた歪みのよって各軸 4つのピエゾ抵抗素子の抵抗値は変化 し、この変化に基づいて各ピエゾ抵抗素子はたとえば X軸、 Y軸においては、ホイート ストンブリッジで形成される回路の出力各軸の加速度成分が独立に分離された出力 電圧として検出される。なお、上記の回路が構成されるように図 8で示されるような上 述した金属配線等が連結され、所定のパッドから各軸に対する出力電圧が検出され るように構成されている。
[0057] また、この 3軸加速度センサは、加速度の DC成分も検出することができるため、重 力加速度を検出する傾斜角センサすなわち角速度センサとしても用いることが可能 である。
[0058] 図 12A,図 12B,図 12Cは、 3軸加速度センサの傾斜角に対する出力応答を説明 する図である。これらの図に示されるように、センサを X, Y, Z軸回りに回転させ、 X, Y, Z軸それぞれのブリッジ出力をデジタルボルトメータで測定したものである。センサ の電源としては低電圧電源 + 5ボルトを使用している。なお、図 12A, B, Cに示され る各測定点は、各軸出力のオフセットを算術的に減じた値がプロットされている。
[0059] 図 13は、重力加速度 (入力)とセンサ出力との関係を説明する図である。図 13に示 されるように入出力関係は図 12A, B, Cの傾斜角の余弦から X, Υ, Z軸にそれぞれ かかわって!/、る重力加速度成分を計算し、重力加速度 (入力)とセンサ出力との関係 を求めてその入出力の線形性を評価したものである。すなわち加速度と出力電圧と の関係はほぼ線形である。
[0060] 図 14A、図 14B、図 14Cは、 3軸加速度センサの周波数特性を説明する図である。 これらの図に示されるように、 X, Y, Z軸それぞれのセンサ出力の周波数特性は、一 例として 3軸ともに 200Hz付近まではフラットな周波数特性を示しており、 X軸におい ては 602Hz、 Y軸においては 600Hz、 Z軸においては 883Hzにおいて共振してい る図が示されている。
[0061] したがって、例えばこの図 14A, B, Cの周波数特性から 3軸加速度センサの動きに より共振周波数の際に応答して共振音が検出されるかどうかを評価することによりデ バイスの特性を評価することも可能である。
[0062] この 3軸加速度センサについても、図 5で説明した検査システム 1 #と同様の方式に より検査することができる。
[0063] 図 15は、測定治具について、 3軸加速度センサのデバイス下側に設けられた図で ある。図 15を参照して、 3軸加速度センサの下部に図示しない測定治具に設けられ た電極 ED #が示されている。具体的には、各重錘体 ARに対応して電極 ED #が設 けられている。この電極 ED #は、図示しないが図 5で説明したのと同様、プローブ針 等を介してテスタ 5の電圧駆動部 30と電気的に結合されているものとする。
[0064] 図 16A、図 16B、図 16Cは、 3軸加速度センサのテストにおいて、デバイス側面か ら見た概略図である。
[0065] 図 16Aには、測定治具 90に設けられた電極 ED # a, ED # bが示されている。上述 したように電極 ED # a, ED # bは、テスタ 5の電圧駆動部 30と電気的に結合されて おり、所定の電圧が印加される。
[0066] 図 16Bは、定常状態において、測定治具 90に載せられた 3軸加速度センサのチッ プ TP #を説明する図である。図 16Bに示されるように、重錘体 ARの下部領域に電 極 ED # a, ED # bが配置されている。
[0067] 図 16Cは、電圧印加状態において、測定治具 90に載せられた 3軸加速度センサの 動きを説明する図である。図 16Cに示されるように、電極 ED # a, ED # bに電圧を印 カロした場合には、静電引力に基づいて電極側に重錘体 ARが吸引される。検査方法 については、図 3で説明したのと同様の方式に従って実行される。すなわち、電圧駆 動部 30からの電圧を印加することにより、電極 ED #と重錘体 ARとの間の静電引力
に基づいて測定治具 90に吸引され、この吸引動作を周期的に実行することにより、 重錘体 ARにおいて出力された検出音をマイク 3で検出する。そして、測定部 25にお いて検出された検出音を測定し、制御部 20においてその判定を実行する。
[0068] 図 17は、他の測定治具について、 3軸加速度センサのデバイス下側に設けられた 図である。図 17に示されるように、各重錘体 ARに対応して電極を各々設ける必要は なぐ一つの電極 EDDを用いて同様の方式に従って検査することも可能である。
[0069] 本例では、ピエゾ抵抗型の 3軸加速度センサを代表的に用いて説明した力 容量 検出型の 3軸加速度センサについても、同様の検査を実行することができる。なお、 容量検出型の 3軸加速度センサの場合にっ 、ては、静電容量を検出するための電 極にたとえば重錘体を動かすためのテスト信号を印加する。このテスト信号に応答し て重錘体を動かすことにより上記で説明したのと同様の検査を実行し、判定すること も可能である。この場合においては、上記で説明した測定治具に設けられた電極等 は不要となり、テスタ等をより簡易な設計とすることができる。
[0070] なお、上記の音を検出する環境については空気中である場合を想定しているがこ れに限られず音が減衰しにくい液体中で検査を実行することにより感度よく音を検出 し、精度の高い検査を実行することも可能である。
[0071] 今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと 考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲に よって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含ま れることが意図される。
産業上の利用可能性
[0072] この発明は、微小構造体の検査装置および検査方法として有利に利用され得る。